6.2 まとめ

このように、同書は、途中で逆の事が書いてあるように読める箇所があるが、それらをノイズとして除去して読めば、紀元前3世紀あたりからの渡来人の影響が無視できるものとして、日本列島の言語が、縄文時代から弥生時代を通して現在にまで連なっている、ということを主張されているようである。 この考え方では、しかし、記紀に溢れる、先住民の討伐、先住民との婚姻、が考慮されておらず、人口推移に関わる試論(小山修三、埴原和朗)が無視され、発音の揺れと音韻の弁別がなされず、分子人類学が教えることが考えられていない、などの基本的な問題を含んでいるものと思わざるを得ない。