アイヌの星名称

orig: 2001/06/02


暁の明星nishat-shaot-kamuiアイヌ・フォークロア*
夜半の明星an-noshki-nochiuアイヌ・フォークロア*
宵の明星aro-numa-nochiuアイヌ・フォークロア
三つ星iyutani-nociw萱野辞典(オリオン星・杵つき星)
北極星ci=nukar-nociw萱野辞典(われら・見る・星)
北斗七星toyta-saot萱野辞典(畑時期になるとずうっと上へ逃げるから)
金星(明の明星)nisatsawot nociw田村辞書nociw
ネズミの倉ermupou田村辞書nociw
杵(きね)iyutani田村辞書nociw
熊の頭marattosapa田村辞書nociw
三人星renuspe田村辞書nociw
北極星poronociw服部方言名寄(大きい・星)
北斗七星wakkakup nociw服部・八雲(水飲み?星)
天の川petnoka服部・幌沙帯(川・形)
天の川nisorunpet服部・八雲(空・にある・川)
流れ星nociw mom/tup/oyupun服部・
keta服部・宗谷樺太千島

*アイヌ・フォークロア=ニコライ・ネフスキーのアイヌ・フォークロアより:人間の始祖が星姫神と交わり人間界を創った物語

田村辞書nociwの項より「星」の用例:
nociw kur 星影
nociw kur ka maknatara 星影が(=星が)明るく輝いている
nociw onisposo 星が落ちる
nociw tup 星が流れる
kunnne nociw 夜の星
参考:北極星の名前は無いらしい。星を見て方角を知ったというような話はでてこない。
nociw o kanto 星・がそこにある・天

注目諸点: 1.服部四郎のアイヌ語方言辞典に出ている keta は宗谷・樺太・千島で使われている(た)。北海道のその他の地域では nociw である。keta が「星」を意味する語の古形であろうか。また、北海道で keta とは「菱」に関わる語である。参照:白兎2(そこからリンクしてある「おに菱の実」の写真は、これを星となぞらえるにふさわしい格好をしてはいる。)

2.上記のように田村辞書では「北極星の名前はないらしい、としているが、同じく上記のように萱野辞書には ci=nukar-nociw として出ている。しかし、この意味も分析すれば「われら・見る・星」であり余り固有名詞的ではない。

3.流れ星や星が流れるに tup という語が入っている。萱野辞書では「移る、場所を移す」。今、出典を当たろうとしたのだが見つからない・・・それは、どなたかが、太陽や月のことを cup というのは ciw-p すなわち(天空を)流れるものだから、と解き、舟の意味の cip も同様の語源に溯るとしておられた(と記憶する)。そうなら、この流れ星の tup も ciw-p がより相応しくなるであろうか。


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