大宜都ひめ・四国二名島との関連 |
知里真志保著作集(全6巻)の第二巻の最後の方に(P431)「糞を食わせつつ来る女」という異様な説話があります。 概略を述べますと、
この話は古事記に出てくる大気津比賣(おおげつ・ひめ)神、日本書紀の保食神(うけもち・の・かみ)を連想させます。即ち、古事記の方では穀物の起源として大気津比賣が「鼻、口、尻から種々の味物を取り出して」スサノヲに提供した、スサノヲは汚い、と怒ってこの比賣を殺してしまう。日本書紀では保食神が「口から飯、魚、獣、を出した」ので月読神が汚らわしいと怒って殺してしまう。 記紀では食物の提供者が殺されてしまうがアイヌの話ではハッピィエンドになっているという違いはあるが、食物の起源に汚いものがある、という類似点がある。 更に気がつくのは古事記には食物を司る神として上記の大気津比賣神の他、豊宇気毘賣(とようけ・びめ)神も出てくる。この豊宇気毘賣は和久産巣日(わくむすび)の子で、和久産巣日はイザナミの尿から生まれている。ここでも食物の起源が(今の感覚では)汚い所に求められている 斯様にアイヌにも記紀と類似した説話があるように窺えるが、記紀のように食物の提供者が殺されるというモチーフは太平洋に広く見られ、ハイヌヴェレ伝説(下記)と呼ばれている。アイヌの説話もこれの系統を引くものなのであろうか。
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