アヤシイ アイヌ語説

orig: 2001/02/20
rev1: 2001/02/21
rev2: 2003/11/21


目に留まったアイヌ語関連記事などの中からアヤシイ記事と、それに対する小生の感想・批判を述べます。
2001年1月22日朝日新聞夕刊の「窓」コラム
四万十川の語源がアイヌ語のシ・マムト(甚だ・美しい)である。
「シ」が、大きい・本当の、は良いとして「マムト」なんて語彙はアイヌ語辞典を4種類、参考書(知里真志保と山田秀三の著書)を数刷逍遥しましたが、そのような語彙はありません。
以前から四国ではそういわれているらしいので、こんな説がどう発生してどう流布したのか、はマスコミ論(?){噂の発生とその流布のメカニズム}としては、大変面白いテーマだと思いますが、どこかの「冊子」を無責任に引用してほしくないですね。アイヌ語の辞書を引いて見ればすぐ判る事です。新聞社に欧州諸語の辞書はあってもアイヌ語辞書は置いてないんでしょうね。
[この記事を御覧になった読者から、この説の根源は寺田寅彦さんの随筆集じゃないか、とのお話があった。それを別途抄出する。こちら。] これによると寺田さんはこじつけとしながら「マムタ」説を出している。「マムタ」に関して最新情報。2003/11/21
2001年2月4日東京新聞サンデー版
「世界の言語地図」
アイヌ語が全く無視されている。そればかりか「日本語だけの私たちには・・・」という冒頭の文言、更には、京大の先生までが「民族言語は人類の知的財産」と銘打ち西欧語、イスラムに触れながら足元の異言語に就いては全く見向きもせずに「地球上の民族言語は・・・90%以上・・が消滅し・・・」などと憂えておられる。
他にも「日本語や朝鮮語、バスク語などは、・・・孤立語として位置づけられています。」という記述があるのに、ここにもアイヌ語がない。旧アジア諸語の表にもケット語、ニブフ語、ユカギール語、チュクチ・カムチャッカ語、エスキモー・アリュート語までリストしているのにアイヌ語が無い。南米のティモーテ語などは死語との注釈つきでリストされているのにアイヌ語はない。

確かに私はアイヌ語に興味があって、いささか勉強してはいる。だからアイヌ語が載っていない事に不満なのだろうか。そればかりではあるまい。

こんな言語地図が堂々と出るのは、いまだに日本の言語学者がレプチャ語だとかタミール語だとには興味持ってもアイヌ語に興味持たない現実を告白しているようだ。日本は単一民族国家と言い放った中曽根首相の危うさがマスコミに於いても継続しているのか。恐るべき不感症だ。

2001年1月12日金曜日の朝日新聞朝刊の広告:
学研M文庫の「古事記」
宣伝文句に「アイヌ語を駆使して難解な文章をつぎつぎと読み解いていく梅原古代学の挑戦」
少なくとも、古事記をアイヌ語で解く、という範疇では、お粗末極まりなく、まず量的に280ぺージ中僅か7ページを割いただけであり「葦原色許男のシは」大便を意味する、など、だからどう発展するのか、も書かず、素人の語呂合わせレベルである。この宣伝文句は誇大広告ではないか。

梅原氏が「つぎつぎと読み解いた」と言ったのを出版社がマに受けたのか、或いは、著者とは独立に学研が下した評価、見解なのか。

以上3件は、何れも新聞社、出版社にメールしているが今日現在何の反応も来ていない。


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