母音使用頻度の推移 母音使用頻度の推移

orig: 97/07/06
rev1: 97/08/08 table&wording


「日本語の世界1」大野晋著(中央公論社、昭和55/12/25)を読み直していました。著者は、そのP151辺りから、万葉集での音韻・音節の使用度数を調べて(他の用例も併せて)「日本語の最古の母音体系は、A, U, Ö, I、の4母音」であった。それが後に「AI→E:, IA→E, UA→O, UI→I:,ÖI→Ï」が生じて8世紀の8母音を持つに至った、と論じています。

(上記で、Ö などと書いた ウムラウトつきの文字は、その母音が乙類のオであることを示します。)

小生もそのアプローチに倣って

  1. 「魏志倭人伝に出てくる倭の人名と国名」、
  2. 「風土記に書かれている出雲の神社名」、
  3. 「三省堂の明解古語辞典(改訂版)の見出しの頁数」、つまり語頭音節だけ、
での傾向を調べてみました。そして、同書がp152に掲げる万葉集での「音韻表・音節別使用度数」の表を集計して、下記に併記しました。出現頻度が一番高い母音をで、二番目に多い母音の頻度をオレンジで表してあります。
音節が終わる
列の名前
魏志倭人伝

%
出雲神社

%
万葉集

%
古語辞典
語頭音節だけ
%
16.1
38.3
28.9
32.0
36.9
27.5
23.0
24.4
24.2
16.2
15.3
15.7
04.0
04.4
09.1
08.2
18.8
13.6
23.7
19.8
合計
100
100
100
100
総音節数
149
755
41947

各データに就いての性格や注意事項を提示すべきでしょうが、繁雑になりそうなので、とりあえず、上記から観察されることを挙げてみます。

あ列音で終わる音節が魏志倭人伝では他に比べて半分位のレベルである。「奴」を「な」でなく「ぬ」と読んだので、それを考慮して「奴」14例を「あ」に分類し直すと「あ」が10%ポイント程上がり「う」がその分下がる。い列音で終わる音節が魏志倭人伝で他例に比して5割ほど多い。

上記「日本語の世界」で著者が推論している、「エ」音は上古には無かった、との話はこの表からも、傾向としては、うなづける。

甲類・乙類の分別をしていないのは、繁雑になるのも本音ですが、大野さんの表の注記でも「甲類乙類の別のないものの数を(甲)の列に書いたものがあるが、それは、ただちに甲類の音であることを示すものではない」とあることにも依ります。それで、「い、え、お」列は甲類+乙類のデータです。

生煮え状態でのアップですが、ここらからどう進んだら良いか迷っているところです。まぁ、語頭子音の頻度、甲乙の弁別、あたりが次にやらねばならないことだろう、とは見当つけておりますが。。。


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