小泉保著「縄文語の発見」に就いて#2

orig: 98/07/
rev1: 2000/02/02 語順へのリンク

引き続き、「縄文語の発見」小泉保著、青土社、の読後感です。

著者曰く:
縄文語裏日本方言の行われていた山口県に土井が浜人に例証されるような渡来人が入り、縄文語九州方言の行われていたところにも渡来人が入る。「これら二種の縄文語が合体して弥生語の基礎をつくり、次のような複雑な母音体系が形成されたと推測される。

その合体の結果、八母音が生まれ、中国からの渡来人の影響になる「高、低、上昇、下降」のアクセントがこれら母音の上にかぶさった。

「こうしたイ段、エ段、オ段で異なる母音をかかえた弥生語は奈良時代まで引き継がれてきて、いわゆる「上代特殊仮名遣」として残されたと説明することができよう。」

小生思うに:
この最後の部分に触れたい為に前触れを付けました。それは、上代特殊仮名遣いは、例えば甲類のヒで発音される語と乙類のヒで発音される語は違う意味を持つ、つまり、音韻として区別されています。

この本には、提起された対になる音に、音韻の区別が認められるような語群が挙げられてなく、読んでいて判断がつきません。

著者が例えば、『広い「エ」(エ甲)と狭い「エ」(エ乙)』としているのが、単に方言による「音の揺れ」に過ぎないのではないかとの疑問が拭えません。

現にp153の琉球方言では「アゲンヅ」の「ゲ」を、沖縄と石垣・ヨナ国に関しては普通の「e」で表し、奄美に関しては「e」の上にウムラウト記号を付して記してあります。

また、「石」の方言形に就いては、p164にて、栃木では「isi」、両方の「i」にウムラウト記号あり、千葉では「isi」の最初の「i」が普通、後の「i」にのみウムラウトあり、となっています。

即ち、同義語なのに音が違う、即ち、それは発音の揺れであって、意味差を表出すべき音韻の異なりではない、従って、上代特殊仮名遣いとは無関係な現象ではないか、と思われます。

続く、予定

小生思うに:続く、予定


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語順で言語の類縁を計るのは間違い
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