ナーナイ族の国土創成神話
スミの江、語義探索

ORIG: 2005/09/12
rev1: 2005/09/13 追記
rev. 2: 2006/08/19 追記

   萩原眞子(おぎはら・しんこ)著『北方諸民族の世界観』(草風館)というのを読んでいる。
 第一部「創世神話」
 第二部「虎、熊、シャチ:『主』の観念と世界観をめぐって」
 第三部「アイヌの口承文芸」
という構成で、それぞれに興味ある資料・指摘があるが、ここでは第一部から「ナーナイの伝承」(p93)から引用する。

「ナーナイの伝承」
(a)
この世の始めには、・・・という三人の人間だけがいた。三羽の白鳥がいた。あるとき三人は三羽の白鳥と三羽のアビを土、石、砂を取りに潜らせた。鳥は潜った。七日間水の下にいた。そして、現れた。彼らは土、石、砂を持ってきた。そして、取ってきた土を持って飛び回った。かれらは世界中を翔けめぐった。アビがくちばしに土と石を持って飛ぶと、大地が生まれた。山と野が生まれた。・・・・
アビ:阿比(かもめ位の大きさの鳥。鵜に似て潜水力強大、魚群を追って集まる)

イザナギの禊ぎ様子は次のようである。
また、海底に沈んで濯ぐと底少童命(そこわたつみのみこと)、底筒男命が生まれる。また潮の中に潜って濯ぐと、中津少童命、中筒男命。また、潮の上に浮き濯ぐと表津少童命、表筒男命。その底筒男命、中筒男命、表筒男命は住吉大神なり。底少童命、中津少童命、表津少童命は、安曇連等が祭る所の神なり。

  • ナーナイでは三人というところが、こちらでは、イザナギ・イザナミの二神に当たるであろうか。(エヴェンキの類似伝承では「兄弟」/荻原:『東北アジアの神話・伝説』p213)
  • 二種類の鳥が三羽ずつ:住吉の三神+安曇の三神。
  • さて、鳥が水中から土、石、砂を取ってきて国土を創成した、という話:日本側の原型もこれに近かったのではないか、と大胆に仮定する。
  • そうすると、スミ、という音が「州(須、す)・神(み)」という意味合いで捉えられないか。
  • 神代7代にも、ウヒヂニ、スヒヂニ(何れも土{泥}の神)が登場している。
  • つまり「住吉」を「スミノ江」と読む場合、スミ(砂州の神)の江、あたりか、ということ。
  • 参考:み(甲):水、神、見、三、美など。み(甲)で「神」の意味になる例は「わたつ・み」「やまつ・み」。「つ」が必須だとすると「すみ」ではなく、「すつみ」という語形になるはずだから、まずい。なお、「かみ(神)」の「み」は乙類。
  • 「筒」は「ツツ」(鳥:鶺鴒の一種)に因んだもの、という考えはどうか。鶺鴒は性交を教える鳥という性格(イザナギ・イザナミ及びアイヌ)とともに、アイヌ説話では国土形成にも関わる(シベリアでもそうだった、と思うが今出典がみつからない。)また、鶺鴒は天空に穴を空けて光をもたらす、という東北アジア伝承もある。
  • 上のナーナイ伝承に類似のものが、シベリアにもあり、そこでは「かも」とされる。(『北方の・・』p148)。「あぢかも」という種類の鴨がある。「あぢ・神」と作れば「あぢみ→あづみ」とつなげてみたくなる。実に「アヂスキ・・カモの大神」という。
    大国主の国譲り:・・・「水戸神の孫、櫛八玉神、膳夫となって、天の御饗を献ずるときに、ほき申して、櫛八玉神、鵜になって、海の底に入り、底のハニ(土)を喰い出て、天の八十毘良迦を作って、・・・」

    共通するのは、鳥が水底に潜って土を拾ってくる、というあたり。ナーナイでは国土が出来るが、日本では平たい土器(はて、大地の象徴???)。「八十毘良迦」が「八十島」の隠喩???アイヌ語で pira-ka は「崖の上」沙流川下流に地名あり。「崖、は日本の崖よりも低いものもいう(田村)」。海面から上、崖の上、∴島?大阪の「枚方」地名も関係するか。

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