「しけしき」の語義
ORIG: 2004/02/22

神武記に「しけしき小屋」という句がある。神武天皇とイスケヨリヒメが結ばれた場所である。岩波古事記頭注では「穢ないとか、荒れたとかの意ではあるまいか」としている。そうであろうか。お気の毒、、、というのはおいておいて。。。

『沖縄古語辞典』を調べてみると
「シケ、聖所。神の在所。対馬、穢れを嫌い、人の住むことの許されない聖所をシゲという(・・)がこれと関わるか。」とある。(「グスク」の項を参照すると「シケ」には「シキ」という語形もあるらしい。)

対馬の語について東條操編『全国方言辞典』では確認できず。しかし、http://www1.odn.ne.jp/muraoka/oyamaguc.htm
「対馬にはシゲと称する聖地(神山)が多く、しかも山岳信仰が強く、神社の神体が山そのものである場合が多かった。愛野の重(シゲ)尾のシゲはこのようなところよりきているのではないだろうか。」とある。

{2012/09/29追記] 上のリンクはつながらなくなっている。
対馬歴史民俗資料館報 第10号のp4に「シゲ」が聖地の名称の一つであることが述べられている。

能登の重蔵神社の「シゲ」もこれか???聖なる所の座(くら)、とか。

「しけしき小屋」の「しけしき」が語形の揺れた同語「しき」と「しけ」を重ねたものか、「しけし」に「き」が付いたものか判断できないが、意味としては琉球語を参照した「聖なる場所」が大変魅力的な解である。

この句の前には「葦原の」が付いており「葦原のしけしき小屋」となっている。アイヌ語 siki が「大きい萱、本当の萱、おにがや、荻」を意味することから、「葦原の」が「しけ(しき)」に対する枕詞的機能を果たしているのかもしれない。

なお「しき」の部分を「磯城、師木」と解することに関しては、私は否定的である。それは、「しけしき」は「志祁志岐」と書かれていて(写本によっては「志祁去岐」とある由)、「祁」は甲類の「き」また甲類の「け」、「岐」は甲類の「き」であり、「しけ(甲)しき(甲)」に対して「磯城」や「師木」は「しき(乙)」だから、である。


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