先ず、アイヌ語と日本語の方言のリストを片山龍峯著「日本語とアイヌ語」(すずさわ書店)のp253から引用します。
| 語彙 | 意味 | 地域 | |
| ウイナ | uyna | 灰 | アイヌ・幌別 | 
| ウナ | una | 灰 | アイヌ | 
| ユナ | yuna | 砂 | 岩手 | 
| ヨナ | yona | 砂 | 岩手 | 
| イナ | ina | 砂 | 千葉 | 
| ヨナ | yona | 灰 | 熊本 | 
| ユニ | yuni | 灰 | 奄美・喜界島 | 
| ユニ | yuni | 砂 | 沖縄 | 
| ユナ | yuna | 砂 | 沖縄 | 
ここから、ヨナ、ウナのような音が入っている地名で近辺に「灰」とか「砂」に関わる地名を探すことにしました。その結果:
| 場所 | ヨナ(等)地名 | 灰・砂地名 | 
| 長野県須坂市 | 米子 米子川 米子山 | 灰野川 | 
| 静岡県浜松市 | 米津の浜 | 中田島砂丘 | 
| 山形県 | 米沢市 | 現在の市境のすぐ北{東置賜郡高畠村}に「砂川」が流れている。その上流に「稲子原」(イナ)。少し離れて「下海上」(ウナ?) | 
とりあえずこれらの例から「ヨナ」(含む類似音)が灰とか砂を意味する日本語方言であり、上記引用した表を裏付ける、乃至は、補完するように窺えます。
次いで「ヨナ、ウナ」などの音を持つ地名を拾って「灰、砂」との関連がありそうか、を見てみたいと思います。
| 海別岳 | 北海道知床半島付け根 | 千島火山帯に属する。火山か? una ape で「灰・火」 | 
| 宇奈月 | 富山県の温泉 | 温泉なんだから火山と関連する。una tuk(i) で「灰の・尾根」 | 
| 宇の山 | 京都・西京区 | 灰方町に至近。ウノ=灰 か? | 
| 畝傍山 | 奈良県 | 死火山。una ape 灰・火、か?出雲の灰火山と同義に思われる。畝傍町西北の雲梯(ウナテ)町もアヤシイ | 
| 宇那手 | 出雲市南東部 | このウナテは何だろう? | 
| 米原町、米川、長砂町 | 鳥取県・米子市 | 「大山」絡みの「灰」だろうか。 | 
| 宇良部岳 | 与那国島・この島名自体が「灰島」みたいだ。この島には他にも比川(pi-nay=小石川?)、祖納(so-nay=滝川?)と興味ある地名がある。 | ウナベからの訛り? una ape | 
アイヌ語或は日本語方言として記録されている「ヨナ、ウナ」(含む類似音)が「灰」または「砂」を意味して、地名にも使われていることを確認し、更に他の地名にも応用してみた、と言うことです。アイヌ語日本語同系説(或は、アイヌ語日本語方言同系説)には一助になりそうです。
千葉方言とされる「イナ=砂」から「伊南、伊那、伊奈、伊奴(?)」なんかがつながるんでしょうか。。。