尊称のコレクション
ツチ系とシヌミ系

orig: 2000/10/29
rev: 2000/11/05 Items added
rev1: 2000/11/14 道主貴 追記
rev2: 2000/12/22


固有名詞と思しき名前の最後に付く尊称として「神」「尊」「命」「彦」「姫」などがあるが、これらの他に目立つものを集めた。類似性のある語群二つに分類した。
ツチ系:大山祇神のページより
ツチ国狭槌尊 
タチ国狭立尊 
ツチ野槌、野椎 
ツチ軻遇突智 
ツチ武甕槌神 
ツツ表筒男命、中筒男命、底筒男命 
ツツ磐筒男(女)命 
ツチ磐土命、底土命「磐=上」と対応しそうだ
ツチ雷(イカツチ) 
ツチ手名椎、足名椎 
チチ手摩乳、脚摩乳 
ツチ建葉槌命 
ツチ塩土老翁 
ツツ塩筒老翁 

上記で同じ神(など)に対して異なった表記、発音が当てられていることをベースにして「ツチ、ツツ、チチ、タチ」は同語なのであろう、と推定できる。

シヌミ系:出雲系図参照
シヌミ八島士奴美神(スサノヲとクシナダの子)[記]
シノ清湯山主三名狭漏彦八嶋篠(同上)[紀]
清繋名坂軽彦八嶋手命(同上の異伝)[紀]
ノ(ヌ)清湯山主三名狭漏彦八嶋野(同上の異伝)[紀]
上記4つの名前は同一人(神)に対する名称である。伝承の確かさの程度を推量する資料となろう。恐らく「シヌミ」という古形が、その意味が忘れられたため、無意味な音節になり正確な伝承を妨げたのであろうか。
チヌミ速甕多気佐波夜遅奴美神 [記]:美は「ミ甲」
ツヌミ加茂建角身命[山城風土記]:身は「ミ乙」
ツミハ都味歯八重事代主神[先代旧事本紀]
シノ味スキ高彦根神・・神捨社[先代旧事本紀]
「士奴美」が「シヌミ」であろうに対して、「遅奴美」は「チヌミ」であろう(何れも頭音は濁音の可能性が高いが清音に捨象した)。同語だとすると、こんな古くから「し」「ち」或いは「じ」「ぢ」の混乱、揺れ、不安定さがあったのか、と驚く。加茂建角身の「角身」も固有名詞ではなく「チヌミ」系の尊称に過ぎないのか?「建」も余り固有性がない、とすると、要するに「加茂彦」って言う程度の意味か?但し「美」は「ミ甲」であり「身」は「ミ乙」だというのが、チヌミ=ツヌミとすることに一抹の不安を残す。2000-11/25
神代紀で宗像三女神を「道主貴」と名づける、とある。これは「チヌシ(の)ムチ」と読ませている。頭音だけを採って「チヌム」あたりがあるのであろうか。そうすると、チヌミ、ツヌミと同類かも知れないが。[added:2000/11/14]
ムチ大ヒルメ貴[日本書紀]
ムチ道主貴(チヌシのムチ)[日本書紀]宗像三女神のこと
ムチ八島牟遅能神、大穴牟遅の舅:八島士奴美神との異同??
ムチ大穴牟遅・大己貴[和名抄6-4裏に「大和国城上郡 大神 於保無知」とある:つまり「神」を「ムチ」と読む ADD2001/10/11]
ヌシ豊国主尊[日本書紀]豊国尊などもあるので、上の八嶋野を通じて「ヌシ」と「シヌミ」が同源となるだろうか?[2000/11/15]
「ヌシ」の源は「の・うし」(〜之・大人)か。Cf.「三熊大人」
ヌシ大国主命
ヌシ天之甕主神
ヌシ経津主神
モチ大穴持命
モチ保食神(ウケモチ)
ヌシ、ムチ、モチ(天津甕星のホシは?)は同根なのだろうか。別表の「ツチ」とは無関係な語だろうか。
海驢(ミチ:あしか?)
ナルミカヤナルミ、鳥鳴海
マルミ多比理岐志麻流美神
マヅミ比比羅木之其花麻豆美神(上の舅)
ツミ大山祇神、大山罪、大山積、
ツミ綿津見神
トミ天日腹大科度美神
ツミ出雲鞍山祇姫[先代旧事本紀]
ツミ大鴨積命[先代旧事本紀]事代主11世孫、崇神期に加茂君を賜姓
ドメ石凝姥(イシコリドメ)[日本書紀]下文に「戸辺」もある
戸辺、都幣(イヒシツベ、出雲飯石郡p216)、戸畔(神武紀ほか)、戸辨(開化記){一字目はツまたは甲類のト。この二音には共通の漢字が使われる。ツ&ト参照。}{二字目は何れも「ベ甲」。猶「女」は「メ甲」}
ドミ天日腹大科度美神[古事記出雲系譜]
ドミ(ラ)日向賀牟度美良姫[先代旧事本紀](ドミ・いらつめ、とでも読むのか)
ドミ(かま)由良度美姫[応神記](天日矛の裔、清日子の娘、多遅麻比多訶との間に葛城高額比賣命を産む、これが次に神功皇后を産む。)
ツミの語源も良く判らない。
「ドミ」と「ツミ」は同語で良い可能性がある。それは甲類の「ト」に使われる漢字は「ツ」にも共用されるからであり「ド」は甲類だからである。[2001/03/08追記]「ツ&ト」参照。


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