三國史記高句麗地名各論
加支達縣・考
orig: 2018/06/10
私が付した整理番号で112番と114番に注目する。即ち

112 蘭山縣 *昔達縣 [123菁達縣(一云昔達)] 蘭=昔
114 菁山縣 *加支達縣 [123菁達縣(一云昔達)] 上の112と同じ地のことか? 昔=加支、菁=加支●(菁:あおな、にらのはな)

まず余り普段は見かけない「菁」という字は
『今昔文字鏡』(031136)によると音では「セイ」と読み訓では「かぶ、かぶら、かぶらな」と読む。
『学研漢和大字典』では「漢音ショウ、呉音セイ」とし意味は「あおな(かぶら、かぶらな)」そして「にらの花」とする。
直感的にも草冠に「青」であるから植物の青さ(緑)を指し示していることが判る。(ニラの茎は緑だが花は白いので疑問は残るが本稿には影響が無い。)

この地名が興味を惹くのは上記から「菁=加支」が仮定できるからである。それが面白いのは『常陸国風土記(久慈郡条)』に:
「有らゆる土は、色、青き紺(はなだ)の如く、画に用ゐて麗し。俗(くにひと)、阿乎爾(あをに)といひ、或(また)、加支川爾(かきつに)といふ」
とあり、ここから 阿乎爾(あをに、青土)=加支川爾(かきつに) と抽出できるからである。 つまり日本側で「あを、青」=「加支(川)(かき(つ))」であり 三国史記でも「菁=加支」なのである。

上記から日本語の「かき(つ)」が「青」を意味するのは高句麗語由来なのかもしれない、と仮設することも出来ようが、一方日本語内部で「かきつに」の意味が「青土」でよさそうであり、「色を画きつける土の意か」(『常陸国風土記』岩波本P82頭註13)も再考すべきであろう。

更に敷衍すれば「かきつばた」の語源が「書き付ける花」だとされているが「かきつ(青)はな(花)」の可能性も考えられる。


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