「喜来地名」 |
orig:1998/05/03
rev1:1998/09/27 風土記記事追加
rev2:2001/05/29 分布図など
rev3:2004/06/13 串と勝
「神が前置する名前」で少し触れた「喜来」という地名に就いて、詳しく述べてみたいと思います。 お読み下さって、この地名の語義、背景、歴史などお知らせ頂ければ幸いです。 この地名の特徴(らしきこと)としては、吉野川流域とその南10KM程度の帯状に分布していること(例外、香川大川、徳島海部牟岐、愛媛新居浜他計2、兵庫淡路島)でしょうか。あとは全国的にも北海道と東北に類似地名かと思われるものが1、2あるだけ、のようで、珍しい地名です。 景行天皇の子どもの一人である、「神櫛王」は讃岐国造の始祖とされてます。「櫛」のことをアイヌ語では kiray と言いますが、阿波と讃岐に「喜来」の付く地名が40-50個程あるのです。分布は下に図示します。ざっと、阿波に30+箇所、讃岐に10-箇所なので、讃岐国造と関連付けようとするには、バランスが悪いのですが、「喜来」が和語らしくないことから「神櫛王」の古来の領地の遺称ではなかろうか、と注目しています。
なお、美作国風土記(逸文)では「ヤマトタケルのみことが『櫛』を池に落としたので、その池を、勝間田池という。玉かつま、とは『櫛』の古語なり」という話があり、かつま、は『櫛笥』のみならず『櫛』自体を表した場合・場所もあるようです。意味範囲の揺らぎ、と考えて良いようです。 2004/06/13追記: 光岡雅彦著『韓国古地名の謎』学生社に、韓国の古地名で「村」を意味する文字が数十挙げられている。この中に、「串、勝、妹支(かつち)」がある。日本語では「串」は「櫛」と同訓であり、「串」と「勝」が韓国古地名で同意である、というなら、「串間」と「勝間」は日本語で同訓であり、そこから同義に使われれば、「櫛」が「勝(間)」と通じるのも首肯される。「玉かつま、とは『櫛』の古語なり」という背景が判明したのではなかろうか。 |