射日神話について
神島、八代神社のゲーター祭に因んで:北方神話との符合
北方神話のワニ(シャチ)
ORIG: 2010/02/15
神奈備さんのHP・BBSで「ゲーター祭り」というのが出ていた。日本語、特に古語としては、不思議な語であり少しく調べてみた。(古語では濁音で始まる語は無いし、「ゲー」「ター」のように延ばす表記は無い)

この祭りは鳥羽市のHPによると次のようである:

(引用)
元旦の未明に行われる八代神社の神事で、夜明け前にグミの木で太陽をかたどった直径2m程の白い輪(アワ)を島中の男たちが竹で刺し上げ、落とします。

「天に二つの日輪なく、地に二皇あるときは世に災いを招く、若し日輪二つあるときは、神に誓って偽りの日輪は是の如く突き落とす」と、邪悪を払い、無事平穏な新しい年の日の出を迎える願いを込めた戦いの祭りです。


(引用終わり)

「ゲーター」の起源、語源が不明のようであるが、まさしく射日神話に由来するものであろう、と考える。射日神話とはネット検索すれば沢山ヒットするので詳細は省くが基本的には:
 昔、太陽(月)は複数あった(地域により数は異なる)、暑くて大変なので射落とした、その結果日月が一つずつになった、というものである。

射日神話は色々に変貌しながら、インドネシア、中国、アムール地域、アイヌ、ブリヤート、更には北欧神話などなどに広がっている。射日神話は「インドネシア族、タイ・支那族、トルコ・モンゴル族、日本、西部インディアンに認められ」る、という。(萩原眞子(おぎはら・しんこ)著『北方諸民族の世界観』、草風館)

更に、中国少数民族における射日神話に関して:民族学伝承拾い上げ辞典に次のような記述がある。

(引用)
山の洞窟に隠れた太陽を呼び出す「招日神話」の前には、きまって多数の太陽の話があり、太陽を射る射日神話がある。ミャオ族をはじめ、ワ族、ラフ族、ハニ族、プーラン族、リー族、ヤオ族、イ族、チベット族、チワン族、トン族など中国南部の各少数民族の射日・招日神話は必ずセットにあっていて、まれに射日神話が単独にあっても、招日神話に前段としての射日神話を欠く例はない。

(引用終わり)
『北方諸民族の世界観』によると射手の名は中国(山東省)では 羿(ゲイ);北方(アムール地域)では、ハダウ、ハダイ、カド、ホダイなどとなっている。

ゲーター祭りが由来としては、射日神話に基づくものでありそうで、「ゲーター」の語源が上の「ゲイ;ハダウ、ハダイ、カド、ホダイ」などに列するもののようにも窺える。が、この祭り自体の起源がウィキペディア(神島(三重県))では「南北朝時代の太陽信仰とも言われ」る、という;そうだとするとその頃の大陸(含むアムール地域)・半島との文化的接触を考えねばならぬことになる。

そこで、それはさておき、射日神話が日本の古代(記紀)にどのように入っているのか、を考えてみる。

スサノヲの悪さを憎んで岩戸隠れしたアマテラス:太陽が射落とされたことに照応しよう
アマテラスの再来:太陽を一つだけ招来したことに照応しよう

朝鮮半島に関していえば済州島の神話では、兄弟二神の一人、大星王が日月それぞれ二つを弓矢で射落とす、とある(『北方諸民族の世界観』p88)
日本神話の「星のカカセヲ」が悪神とされていることと関連がありそうだが「カカセヲ」の所業が書かれていないので断定できない。

中途半端な考察になってしまった。もう少し勉強してみる。


Homepage & 談話室への御案内
北方神話のワニ(シャチ)
目次へ戻る
メールのご案内へ