土雲 荒神 |
土雲、土蜘蛛、土知朱、などと書かれ、ツチグモ、と呼ばれる人達が、古代史に出てきます。 このサイトでは既に「荒神」と神武記の記事の関連で触れたことがありますが、土雲、を主題として、まとめておきます。 まず、土雲、という漢字の意味を日本語で考えてみますと、土の雲、では意味が通りません(と思います。)土蜘蛛、なら、そういう動物が居るのかも知れません。(ネット検索では見つからないけど) その動物になぞらえて、ツチグモ、という日本語が古くに蔑称であった、土雲、と書くのは無知による転化・誤解、というようなことでも説明出来れば本件は一件落着かもしれません。 しかし、そういう方向で説得力のある説明には接したことがないので、他を考えてみます。 アイヌ語は縄文語(複数あるならその一つ)の後裔言語なのではないか、と思っているので(傍証はこのサイトに満載)、ここでもアイヌ語で考えます。 土 を意味出来るアイヌ語単語は、toyです。雲を意味するアイヌ語は nis-kur です。ここで前半のnis は空のことで、後半のkur は影、人、神、などを意味します。 また、toy (土)は人を憎んでいう場合に前置される例があります。toy Penampe wen Penampe 憎らしいペナンぺ(人名)、悪いペナンぺ。 雲 を空の蔭、影、と表現するアイヌ語の造語法も面白いものがあります。 言語学者の服部四郎は kur 自体が雲を意味出来るかもしれないような示唆をしています。(語根 kur は日本語の黒、暗、暮にも含まれるし、朝鮮語 kurum=雲 を考えれば日本語の雲は kur+mo から来たとも考え得る。参考:日本語の系統。) そうだとすると、toy kur と作れば、土・雲 であり、また、憎い・人ともなる。 例えば、神武東征に加勢した弟磯城(縄文系先住民、と考える)が、神武と戦った兄磯城のことを、バカなヤツめ、と縄文語で蔑んだとしたら、toy kur! と言ったかも。それは何の意味だ、と聞かれて、toy は土、kur は雲、と翻訳すれば、ハイ土雲の出来あがり、なんですが。 この推定はこれだけで単独ではなく、荒神でも考えたように、アラブルニシモノ、という言葉がある。前半は荒神のページをご覧頂くとして、後半の「ニシモノ」(悪者、賊)が nis-kur (前半音写、後半翻訳)を反映しているようにもうかがえる、ということがあります。 また、神武記のページで述べているように、空みつ大和の国、という表現にある「空見つ」が nis kirkiru と翻訳できる。これは実は、nis-kur kur=雲・人(神)が nis kirkiru に転じたものを 空見つ と翻訳したのではないか、と推測してます。 というわけで、土雲、は toy kur の周辺からの翻案だと考えると都合の良いことがある、ので、そうなのかもしれない、という話でした。 |