灰と una 「灰」と una

ORIG: 98/04/18

出雲の「灰火山」の考察で触れたことですが、「灰」とアイヌ語の una に関してもう少し調べが進みましたので書き留めておきます。

先ず、アイヌ語と日本語の方言のリストを片山龍峯著「日本語とアイヌ語」(すずさわ書店)のp253から引用します。

語彙 意味 地域
ウイナ uyna アイヌ・幌別
ウナ una アイヌ
ユナ yuna 岩手
ヨナ yona 岩手
イナ ina 千葉
ヨナ yona 熊本
ユニ yuni 奄美・喜界島
ユニ yuni 沖縄
ユナ yuna 沖縄

ここから、ヨナ、ウナのような音が入っている地名で近辺に「灰」とか「砂」に関わる地名を探すことにしました。その結果:

場所 ヨナ(等)地名 灰・砂地名
長野県須坂市 米子
米子川
米子山
灰野川
静岡県浜松市 米津の浜 中田島砂丘
山形県米沢市現在の市境のすぐ北{東置賜郡高畠村}に「砂川」が流れている。その上流に「稲子原」(イナ)。少し離れて「下海上」(ウナ?)

とりあえずこれらの例から「ヨナ」(含む類似音)が灰とか砂を意味する日本語方言であり、上記引用した表を裏付ける、乃至は、補完するように窺えます。

次いで「ヨナ、ウナ」などの音を持つ地名を拾って「灰、砂」との関連がありそうか、を見てみたいと思います。

海別岳北海道知床半島付け根 千島火山帯に属する。火山か? una ape で「灰・火」
宇奈月 富山県の温泉 温泉なんだから火山と関連する。una tuk(i) で「灰の・尾根」
宇の山 京都・西京区 灰方町に至近。ウノ=灰 か?
畝傍山 奈良県 死火山。una ape 灰・火、か?出雲の灰火山と同義に思われる。畝傍町西北の雲梯(ウナテ)町もアヤシイ
宇那手 出雲市南東部 このウナテは何だろう?
米原町、米川、長砂町鳥取県・子市「大山」絡みの「灰」だろうか。
宇良部岳 与那国島・この島名自体が「灰島」みたいだ。この島には他にも比川(pi-nay=小石川?)、祖納(so-nay=滝川?)と興味ある地名がある。 ウナベからの訛り? una ape

アイヌ語或は日本語方言として記録されている「ヨナ、ウナ」(含む類似音)が「灰」または「砂」を意味して、地名にも使われていることを確認し、更に他の地名にも応用してみた、と言うことです。アイヌ語日本語同系説(或は、アイヌ語日本語方言同系説)には一助になりそうです。

千葉方言とされる「イナ=砂」から「伊南、伊那、伊奈、伊奴(?)」なんかがつながるんでしょうか。。。


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