同じEでもおさえる場所が違う?! |
orig: 2001/02/25
rev1: 2001/03/09
バイオリンD線、第一ポジション、第1指で弾くEに就いて考えてみる。次の譜例を参照する。 |
1. 先ずバイオリンの調弦は第一小節のようにするが、ここでD音はG音より丁度1.5倍周波数が高い。或いは、Gの周波数:Dの周波数 = 2:3 という単純な整数比になっている。これが最初の重要なポイントだ。二つの音の周波数比が単純な整数の比率で表される場合に「音が合ってる、ハモってる」ということになる。そういえば、オクターブってのが周波数比が 1:2 のことを言うことは知ってる人も多いだろう。 |
2.そして(いちいち「周波数」と書くのはやめるが)D:A も 2:3 なのだ。同様にA:E も 2:3だ。これを全部G=1として表現するならD=3/2、A=(3/2)*(3/2),E=(3/2)*(3/2)*(3/2)、となる。表にまとめておくと |
E | (3/2)^3 | 27/8 | 660.00 |
A | (3/2)^2 | 9/4 | 440.00 |
D | (3/2)^1 | 3/2 | 293.33 |
G | (3/2)^0 | 1 | 195.56 |
音 | 周波数比 | 左を計算すると | A=440Hzとすると |
3. さて、譜例の第3小節目から考える。全音符で示したE+Aがよくハモるようにするにはどうするか。全音符で示したEのオクターブ上に開放弦のEがある。これが開放弦Aを440Hzとした時に、開放弦Eは660Hzになっている。そのオクターブ下とは、2で割れば良いから、330Hzということになる。これ(330Hz)と開放弦A(440Hz)とは3:4という単純な整数比であり、良くハモる。 |
4. 次に譜例の第2小節目のG+Eをハモらせるにはどうするか。仮に上記3.の場合と同じ場所を押さえて330Hzを出すとしよう。開放弦のG195.56HzとはAの(2/3)に相当するDの更に(2/3)のことだ。つまりAの4/9に相当している。これとAの3/4に相当するEの関係はどうなるか。(4/9):(3/4)ということは 16:27 ということである。さて、これは単純な整数比だろうか??? |
5.自然倍音という倍音列がある。例えばホルンの原理(?)としてガスのホースにマウスピースをつけて吹いてみると一番低く共鳴する音がある。これを仮にド1とする。も少し強く吹くと、そのオクターブ上のド2が出る。これを2倍音という。更に上の方を探って行くとド2の完全5度上であるソ2が出る。これを3倍音という。その次に出てくるのが4倍音、さて、何の音だろうか。そりゃそうだ、4倍音とは2倍音のオクターブ上だ。つまりド3とでも名づけようか。その次にミ3とでも呼ぼう第5倍音が出てくる。
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6.これが今求めようとしているGに対する、ハモるEを決めるのに重要なことだ。つまりド3とミ3の関係が4倍音:5倍音ということだ。少し戻って、ソ2とミ3の関係は、3:5ではないか! これがGに対して求めていた良くハモる方のEだ。
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7.先に周波数を計算してしまうと、Gの195.56Hzの(5/3)倍がハモるEだ。 325.9259Hzと計算された。
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8.大変だぁ。さっきAと合わせようと思った時のEは330Hzだったのに、今度Gと合わせようとすると、約326Hzにしなきゃならん。。。ここの約4Hzの差、ってのは1%以上の違いだ。(正確には1.25%の筈)バイオリンの弦の長さを約30cmとすると、その1%は3mmだ。その位の微調整をしないと合わせるべき音に対する sweet spot が違うんだ。
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9.こういうことを各調に対してリアルタイムに実行して行くと「良くハモる音程だ」と言われるようになる、、、のだろう。。。 ところが一方メロディラインの場合には330Hzの方のEを弾くのが「気持ちが良い」とされる。奏者は従って、各場合がメロディラインを大事にするか、ハモリをより大事にするか、を決めて、それに沿った「周波数」を「出力」することが、どうやら、求められるらしい。
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10.ここにE音を例に挙げたがこの音はハ長調ならミだが、イ長調ならソに相当する音だ。上に数字を挙げて説明したのは、他でもない、同じE音でも、ハ長調のミに相当する時とイ調のソとして使われている時では出すべき音の高さ(周波数)が違う、ということだ。 |
11.さっき、ゴムホースの話を書いたが、実はバイオリンでも倍音(複数)を出すことが出来る。G線の高い方で、指を滑らせながらフラジオレットを出すと色んな自然倍音の音が出てくる。開放弦のGをG0と呼ぶと弦長の丁度半分がG1、そのまた半分の場所でG2が出る。G1が出る場所とG2が出る場所の中間にD2が出る場所があるだろう。弦を3等分した位置の筈だ。G2(4等分の場所)から更に上の方へフラジオを探して行くと、ソシレソ(G2,H2,D3,G3)って出て来ませんか? このG2とH2が長三度。意外に狭い(H2って低い)と思いませんか? これが和音を造る時の正しい長三度なんだそうです。 |
12.良くハモる三度(純正三度)と、メロディラインで使う三度(ピタゴラスの三度)などを視覚的に表現したのがリサージュ図形です。御覧あれ。 |
追加:良くハモる三度(純正律)と、メロディラインで使う三度(ピタゴラスの三度)などを聴覚的に表現したのが純正律とピタゴラス音階の聞き比べ:また、その演奏の楽譜(下半分) |