巻三五・#35/#72 難隠=七・考 |
高句麗語として抽出された数詞の内、3,5,7,10が日本語に似ていることから、日本語と高句麗語に近縁関係を想定している論者が多い。 ここでは「7」について、通説以外に考え方がないのか、検証してみる。
上記の[35七重縣(一云難隠別)]から「七」を「難隠 nan-in」に宛てて「ナナ」に近いと考えるのが通説である。そして「重」と「別 biar」を対応させて、これが日本古語の「重(へ)」に当たるとするのが板橋論文(#1)である。 他の対応関係の可能性は考えなくて良いのであろうか(或いは、既に考えたが何らかの理由で破棄できるのか)。即ち、「七」と「難」、「重」と「隠」、「縣」と「別」と対応させるのはどうだろう、という提起をする。 この場合には「難隠別」の「別」は「村用語」(忽、などと同様)と捉えて「縣」に宛てられた、と見ることになる。 「重」と「隠」を対応させてみるには72のデータを参照する。即ち「重盤」と「乃忽」を対応させてみる。即ち「重」と「乃」が字の順番では対応している。「乃」の音は「ナ・ノ」の周辺である。「仍」も同類音である。ここで、
「仍」は「陰」と翻訳されているようだ。「陰」と「隠」は同音・類音である。このように多段論法になるが「重」と「隠」が対応している、という論理は成り立つ。 このように「縣と別」「重と隠」が対応する説明がついたので、残るのは「七=難」となる。「七重縣」「難隠別」から「七」=「難」、「重」=「隠」、「縣」=「別」という対応を提案したい。この提案に伏在する恣意は、「七」=「難隠」とする通説に存する恣意とどれほど異なろうか。 |