三國史記高句麗地名各論
巻三五・#35/#72 難隠=七・考
orig: 2004/07/08
高句麗語として抽出された数詞の内、3,5,7,10が日本語に似ていることから、日本語と高句麗語に近縁関係を想定している論者が多い。
ここでは「7」について、通説以外に考え方がないのか、検証してみる。

35 重城縣 *七重縣 [35七重縣(一云難隠別)]  
72 重盤郡 *息城郡 [73漢城郡(一云漢忽、一云息城、一云乃忽)]

上記の[35縣(一云難隠)]から「」を「難隠 nan-in」に宛てて「ナナ」に近いと考えるのが通説である。そして「」と「 biar」を対応させて、これが日本古語の「重(へ)」に当たるとするのが板橋論文(#1)である。

他の対応関係の可能性は考えなくて良いのであろうか(或いは、既に考えたが何らかの理由で破棄できるのか)。即ち、「」と「」、「」と「」、「縣」と「別」と対応させるのはどうだろう、という提起をする。

この場合には「難隠別」の「別」は「村用語」(忽、などと同様)と捉えて「縣」に宛てられた、と見ることになる。

「重」と「隠」を対応させてみるには72のデータを参照する。即ち「重盤」と「乃忽」を対応させてみる。即ち「重」と「乃」が字の順番では対応している。「乃」の音は「ナ・ノ」の周辺である。「仍」も同類音である。ここで、

  • 11 陰城縣 *仍忽縣 陰=仍
  • 13 陰竹縣 *奴音竹縣 陰=奴音:∴11陰=仍=奴音(ナイン、ナンあたり)
を参照すると、

「仍」は「陰」と翻訳されているようだ。「陰」と「隠」は同音・類音である。このように多段論法になるが「重」と「隠」が対応している、という論理は成り立つ。

このように「縣と別」「重と隠」が対応する説明がついたので、残るのは「七=難」となる。「七重縣」「難隠別」から「七」=「難」、「重」=「隠」、「縣」=「別」という対応を提案したい。この提案に伏在する恣意は、「七」=「難隠」とする通説に存する恣意とどれほど異なろうか。


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