シコ・醜・色 |
この字・音を持った名前を集めてみて何か探れることでもないか、と試みてみました。 多少異説もありますが、先代旧事本紀に「シコ」の付く名前が一番沢山出ているようなので、それに基づきますと:
葦原醜男 | 大国主の別名の一 | |
0代 | ニギハヤヒを0代として | |
1代目 | ウマシマヂ*師長姫 | |
2代目 | 彦湯支命に出雲色多利姫が嫁している | |
3代目 | 三兄弟の一人が出雲色大臣 | 他に、大禰命と出石心大臣 |
4代目 | には見当たらないが | |
5代目 | 欝色雄・欝色謎 ウツシコヲ / ウツシコメの兄妹 | 妹は考元皇后 |
6代目 | 伊香色雄・伊香色謎 イ カ シコヲ / イ カ シコメの兄妹 | 妹は考元妃・開化皇后 |
こうして並べてみると「シコ」の前に来ている語が地名を表していそうに見えてくる。即ち、「葦原」とか「出雲」とかが先ず地名であろう。しからば、ウツやイカ(或いは、イカガ、と読む書もある)も地名ではなかろうか。
イカ(ガ)に就いては、伊香、伊賀、加賀、なんて地名が思い当たる。
ウツ、は何なのだろう。この兄妹の名前は古事記では「内色許男、内色許売」と書いてあり、葦原中国(なかつくに)の「中国」ナカツ国、の「中」と同義ともなりそう。
前半が地名だとして、どこどこの醜い男・醜い姫様、ってことでしょうか。どうも気に入りません。
さてそこで、アイヌ語です、(^_^)。
siko には生まれるという意味がありますが、どうでしょう、葦原生まれの男、イカで生まれた姫様、などなど、、、
「シコ」が日本語古層に由来する(縄文語とか、、、)言葉で、今もってアイヌ語で理解できる、とすると前半の地名もアイヌ語で理解してみたくなります。
先ず、「ウツ」から考えてみると、utur には「〜の間、仲、下座、西側」などの意味があります。「〜の間、仲」など「中国」とか「内国」とかに翻訳、変身していても悪くなさそうに思えます。
「イカ」に関しては、ika と言う言葉が、越す、溢れる、の意味を持ち、伊賀越え、などと言うように、峰を越して往復する土地の名前に相応しそうです。
いずれにしても、この「シコ」の付く名前が、大国主を別格とすれば、ニギハヤヒ→ウマシマヂ系譜の2〜6代に限って出現する(反証がありましたらご教示下さい)のが、特色です。
なお、先代旧事本紀の国造本紀に出てくる「遷狛一奴」の分析でも「ウツ・シコ」を析出してみましたので、リンクしておきます。
なお、3代目のもう一人の兄弟は、出石心大臣ですが、強いて挙げれば、ここにも、 イヅ「シコ」コロ、とシコを無理矢理(?)見る事も出来ます。
蝦夷にも「シコ」と読める名前がありました。高橋崇著「蝦夷」を見てたら、こんなシコ(?)名がありました。
胆沢公・阿奴志古 | 延暦11 AD792 | |
宇漢米公・色男 | 弘仁 3 AD812 | |
これらがシコなら、次も加えても良いのかも。但し、「西」は「セ」と読むのが普通なのだが、、、 | ||
吉弥候部:伊佐西古 | 宝亀 9 AD778 | |
伊佐西古 | 宝亀11 AD780 | すぐ上と同人でしょう |
なお、斉明紀に「膽鹿嶋」(イカシマ)、日本後紀弘仁2年(AD811)に「伊加古」なんて名前もあり「イカ・シコヲ」なんかの「イカ」が拾い出せそうです。(^_^)
この本のP32-36に49個の蝦夷の名前が挙がってますが、そのうち8名が「古」か「己」すなわち「コ」で終わっているのも注目されます。(そのうち4つ(2つ?)が「シコ」らしい。)つまり、アイヌ語 kor(持つ/所有する)も考えられます。(参照: kotan kor kur 村・持つ・人=村長)
さて、こんな事が「葦原醜男」などの名義を解く鍵になるだろうか。。。
ウツシコマ考へ 歴史館の目次へ 言語館の目次へ コメント・御感想、メールフォームへ Homepage & 談話室への御案内 |