縄文人とアイヌ人の関係、など |
縄文とアイヌ人、アイヌ人と日本人、琉球人、周辺の人たちとの関連、旧モンゴロイドと新モンゴロイド、などに関する最近の研究が発表されています。尾本恵市著「分子人類学と日本人の起源」(裳華房)を読んだ機会に自分の頭の整理のためにも一度まとめてみました。
なお、この本は著者の研究成果の紹介をする一方、最近の研究成果に就いてもとても公平に紹介、比較、議論がしてある好著だと思います。
研究者と視点 | アイヌ人と縄文人 | その他の関係 | 出典・参考 |
尾本恵市 23の遺伝子座 | モンゴル、アイヌ、チベット、日本、朝鮮が同根の如し | 尾本恵市「分子人類学と日本人の起源」裳華房 p119 | |
埴原和郎 頭骨計測 | 縄文から続縄文を経てアイヌとなる | また、縄文から琉球人日本人が分派 | 尾本恵市「分子人類学と日本人の起源」裳華房 p143 |
埴原恒彦 頭骨と歯 | アイヌ、縄文、ネグリト、アボリジニ かなりの類似性 | 尾本恵市「分子人類学と日本人の起源」裳華房 p149 | |
宝来聡 ミトコンドリアDNAの190の塩基配列 | 縄文、アイヌ、マレーシア、インドネシア、で一致したサンプルもある | 尾本恵市「分子人類学と日本人の起源」裳華房 p152 | |
宝来聡 ミトコンドリアDNA | 縄文と近世アイヌ、現代日本人の一部、東南アジア人の一部が近い | 現代日本人の残る部分は左記の日本人と系統的にかなり異なる。つまり日本人(また、モンゴロイドにも)2種がある | 朝日科学編「モンゴロイドの道」 p140 |
田名部雄一 日本犬 | アイヌ犬、沖縄犬、フィリピン犬、近い | 山陰狛犬は朝鮮に近い | 尾本恵市「分子人類学と日本人の起源」裳華房 p154 |
佐原真 竪穴住居 | 縄文の竪穴住居は北方起源 | 尾本恵市「分子人類学と日本人の起源」裳華房 p154 | |
松本秀雄 Gm遺伝子 | アイヌは白人ではない | 日本民族は北方起源(日本人バイカル湖起源説は頂けないが膨大なデータを広くに提供された功績は大きい) | 尾本恵市「分子人類学と日本人の起源」裳華房 p155 松本秀雄「日本人は何処から来たか」NHKブックス#652 |
根井正利 遺伝距離 | アイヌも日本人も北方起源 | 尾本恵市「分子人類学と日本人の起源」裳華房 p156 | |
尾本恵市 化石 | 縄文人=港川人、上洞人に近い(周口店) | 尾本恵市「分子人類学と日本人の起源」裳華房 p160 | |
**** 耳垢 | アイヌと琉球がウエット | 本土や朝鮮はドライ | 尾本恵市「分子人類学と日本人の起源」裳華房 p163 |
Rh- (r'' cdE) | アイヌと琉球が近そう | 尾本恵市「分子人類学と日本人の起源」裳華房 p163 | |
味盲 | アイヌと琉球は違う | アイヌ<本土<琉球 | 尾本恵市「分子人類学と日本人の起源」裳華房 p164 |
百々幸雄 頭骨小変異 | アイヌと琉球は違う | 尾本恵市「分子人類学と日本人の起源」裳華房 p164 | |
尾本恵市 ブートストラップ法 | アイヌと琉球は近い | 尾本恵市「分子人類学と日本人の起源」裳華房 p166 | |
田島和雄 HTLV-I (ATLビールス) | アイヌと琉球にキャリア多い:旧モンゴロイド | 本土にキャリア少ない:新モンゴロイド | 朝日科学編「モンゴロイドの道」 p204 |
原田勝二 アルデヒド脱水酵素 | 縄文など旧モンゴロイドは上戸 | 新モンゴロイドは下戸 | 朝日科学編「モンゴロイドの道」 p212- |
尾本恵市著「分子人類学と日本人の起源」の注目すべき指摘は:
このことを、私が興味を持つ言語の分野に翻訳してみれば、アイヌ語と琉球語は共に縄文語に近いかもしれないぞ、でも、縄文語の起源が南方言語にある(村山七郎など)というのは違うかもしれないぞ、ということになる。
[以下、2003/01/02書き直し]
私は琉球語の勉強を始めたばかりだが、アイヌ語と琉球語の間には、かなりの距離がありそうに見える。(一部、地名などでアイヌ語と琉球語に通じるものも見受けられるが、それらは縄文語から引き継がれたものだ、と考えることは構わない。)
琉球語は日本語と同根であることは確実と考える。従って、日本語とアイヌ語の間には大きな距離がある、と考えるならば、琉球語とアイヌ語も相当に離れた言語であろう。
琉球語と日本語は、弥生時代に行われていた言語(弥生語と仮称)を共通祖語とした言語であろう。
縄文語−−−−+−−−−−−−−−アイヌ語
渡来語
↓=↓ /−−−−−日本語
弥生語−−
\−−−−−琉球語 という模式図は有力なパラダイムであろう。