鳥と舟

ORIG: 2001/03/16
古代の遺跡などに「鳥」と「船」のモチーフが同時に表象されていることが散見される。更に「日」が加わることもある。そんな例を、どんたくさんのご協力を得て、集めている。

鳥について、はこちら

考古資料
福岡県珍敷塚(メズラシヅカ)古墳 後室奥壁の壁画(6世紀)船首に鳥がとまった舟鳥船塚のモチーフと共通。亡き首長の霊が黄泉の国へと鳥に先導されつつ向かう光景を空想して描いたもの
福岡県鳥船塚古墳 玄室奥壁の壁画(6世紀)船首と船尾にそれぞれ舳先の方を向く鳥をとまらせ、1人の人物が櫓を操る船が描かれ、その右には桟橋のような表現が、左側には1人の人物が見られる。船の上方には同心円が1個、
熊本県山鹿市の弁慶ガ穴古墳(6世紀後半)側壁に、ゴンドラ形の舟にのった荷物の上に鳥がとまっている絵があるそうだ。荷物を棺と見立てる人もある
ボルネオの鳥船(南ボルネオのテムポン・テロンの鳥船)大林太良「民族学からみた装飾古墳」(図録「装飾古墳の世界」p.161)私(大林)は、この船は使者をあの世に運ぶ船ではないかと考えている
林遺跡出土の船形埴輪(大阪府藤井寺市)(5世紀)船の舳先(又は艫?)の左右の舷側板を繋ぐ梁状の横木に鳥がとまっている。
奈良県・東殿塚古墳の埴輪の絵鰭つき円筒埴輪の線刻画。船に鳥がとまっている
文献
神代紀・国ゆずり天鳩船事代主への使い(鴿=鳩)
神代紀・国ゆずり天鳥船築杵大社に配する
神代記・国ゆずり天鳥船建御雷命に副える
神代記・大国主系譜日名照・・・天夷鳥?海部直鳥(肥前風土記)
出雲風土記・「鳥上山」後に「船通山」と呼ぶ鳥上=chir-kasi 船通=chip-kus
出雲風土記・楯縫郡天御命(建比良鳥命のことか。古語拾遺の彦狭命か、と)Cf. 鳥=chir=知
物部文書ニギハヤヒは天鳥船で天下った秋田県の唐松神社に伝わる書類
琉球・奄美民謡オナリ神(妹)が白い鳥となって兄の船のトモにとまっている谷川健一・日本の神々・岩波新書p222

鳥・船をアイヌ語でいうなら chir chip などとなろうから、チチ、とか、トト、という語の用例を上げておく

チチ(トト)
栲幡千千姫チチニニギの母
正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊カチカチ→カカチチ?ニニギの父
春日千乳早山香媛チチ 
倭迹迹日百襲姫トト 
乳速日(旧事本紀天神本紀)チチ 
千千衝倭姫(記:千千都久和比賣)チチ 
秩父チチ・ブとは変わった名前ではあるchir-chip 鳥・船か???

アイヌ語では「鳥」「船」そして「日」「秋」「潮」を表す語彙が何れもchで始まる。即ち:

ch で始まる一音節のアイヌ語彙
太陽chup月も意味する
chirchikap とも言う
chipchiw-p 流れる・物、との語源説明もあるが
chukchuk-ipe 秋の・食物=秋鮭
潮(の流れ)chiw流れる、の意もある
他に当面関連しないだろうが chik, chis, chak, chas, chin,などもある。
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