クダラ(百済)の語義については、多くの説があります。
解読の難しい言葉です。
ただ、多くの識者が認めるのは、「クダラ」は日本が百済を呼ぶ際に使う言葉だということです。
それは、韓国で百済を言うときには「クダラ」の言葉は使わないからです。
さて、この「クダラ」を解読するに当たって、問題を複雑にしている原因の一つは、百済(baegje=ぺクチェ)に「クダラ」の読みを当てていることだと思います。
ですので、「クダラ」を「百済」の国号から外して考えてみるのも一つの手でしょう。
そこで、百済の国号とは無関係に考えを広げてみますと、問題解決の最初の鍵は「クダラ」の「ク」音となります。
王の居るところは中国語では宮殿です。
この「宮」の中国語中古音は「kiung(キウン=宮)です。
そして、韓国語では「gung(クン=宮)」となります。
日本語の場合は「宮」は、「ク=呉音、キュウ=漢音」とされています。
今でも宮内庁は「クナイチョウ」で、宮はクと発音します。
このように見ますと、「クダラ」の「ク」音は王の居る宮を指す日本語発音の「ク」と重なります。
クダラは、王の住む宮に関わる言葉だと見ることも可能だということになりますね。
この宮(ク)の発音を基にして想像を広げて行きますと、次のサイトの内容が注目されます。
https://www.bhm.or.kr/html/jp/cultur/cultur_01_01.htmlhttps://japan.hani.co.kr/arti/culture/48561.htmlクダラの宮城の中には、多くの宮殿があったようです。
宮が多数設けられていたということですね。
そこで、「宮が多い」から平仮名を取り除きますと「宮多」ですので、これを発音しますと「クタ」となります。
つまり、クダラのクタ(宮多)が出てきたことになります。
では、「クダラ」の「ラ」は何でしょうか。
百済と対立したのは新羅(シラギ)ですが、この新羅の読みは漢字音では「シンラ」となります。
これを新羅(シラギ)と日本で読むのは、新羅(シンラ)に城(キ)を加えて新羅城(シンラギ)とし、そのシンラギのン音を飛ばし、日本語の城(キ)の字を落としたのがシラギ(新羅)なのだと思われます。
なお、羅(ラ)は城壁の意ですので、新羅(シンラ)とは「新しい城壁=新しい都」の意味ですね。
この新羅の例から、羅の字を抜き出して先の「宮多(クタ)」に「羅」を付けますと「宮多羅(クタラ)」となり、これは「宮殿の多い都城=盛んな都」の意味になります。
これを韓国語で読んでみますと、宮多羅は「グンダラ」となります。
日本語ではどうでしょうか。
日本語では、宮多羅は「クタラ」となります。
日本語での百済(クダラ)はクタラ(宮多羅)ではなくクダラとなりますが、最初はクタラと発音したものが、やがてクダラと濁音化し、その都城を意味した言葉がやがて国を呼ぶ言葉に変わったとすれば、百済(クダラ)の発音の説明はつきます。
一方、韓国語では、宮多羅はクンダラと最初からダ音です。、
この宮多羅(クンダラ)からクン(宮)のン音を飛ばせば宮多羅はクダラとなりますね。
しかし、韓国では、百済の都城を俗語で宮多羅(クンダラ)と呼んだとする説はまったくないようですから、可能性は低いかも知れません。
このように考えますと、クダラとは「宮多羅」の漢字表記の発音であり、そのクダラとは百済(ぺクチェ)の国の都城を指した俗語であった可能性が出てきます。
そして、その俗語は、日本で造られた言葉であったと考えるのが自然かもしれません。
それが、やがて、百済の国を指す言葉になったということではないでしょうか。
つまり、百済(クダラ)の言葉は、日本で造られた百済の都城を指す俗語として生まれ、やがて百済の国を指す言葉へと変わって行ったということではないでしょうか。
この新説は、かなりリアルだと思われますが、いかがでしょうか。