オノコロ島・考 |
そして成り成りて足らざる所を成り成りて余れる所で刺し塞いで国生みに入る。
ここまでのモチーフ、キーワードを対応するアイヌ語(縄文語の後裔言語と考えている)を示す。
古事記 | アイヌ語 | 備考 |
漂う | rur ko suye | 海・上・浮 |
漂う | ciw ko suye | 潮・上・浮、も有り得そう |
直す=作る | kar |   |
矛 | po-kor(音写) | 意味は「子を生む」 |
沼 | nu(音写) | 見る、の語根 |
結婚する | u-nu-kar | 互いを・持つこと・をする(分類・人間編)→オノコロ? |
互いに見る | u-nu-kar | →オノコロ? |
結婚する | u-nukar | 分類・人間編 |
結婚する | u-kor | 分類・人間編 |
累積する | u-ka-o | 積み上げる |
互いに | u |   |
向かって・共に | ko |   |
固まる | u-ko-tak-tak-se |   |
混ぜる | u-ko-taci-taci |   |
性交・交合する | u-ko-ciw | 潮の滴り、鶺鴒と比較されたし |
刺す=潮 | ciw | 潮の滴り、性交、と比較されたし |
滴る | cirir |   |
鶺鴒 | o ciw ciri |   |
即ち、この国生み段には「潮、刺す、滴る、混ぜる、性交する」というキーワードが ciw/ci- で、また、「作る、生む、見る、累積する、性交する」などに、uko, ukao, u, ko, kar 音が頻出している事が見て取れる。
既に別掲したように、国生みに際してこの二神は交合の方法がわからなかった所へ鶺鴒が飛んできてその仕草を見て方法を覚った、というアイヌにも共通の伝承となっている。鶺鴒のアイヌ語は o ciw ciri である。これは 潮・滴る ciw cirir と酷似した音になる。
更に、累積する u-ka-o 潮 ciw と u-ko-ciw 性交する、の酷似も指摘できよう。
このように、この国生み神話も縄文の昔から伝えられてきた話、として理解すると、単なるストーリーだけでなく、語呂合わせの面白さが充満した説話になっており、口で伝承するのに便宜が図られていることが見える。オノコロ島の語義はギ・ミの二神が相まみえたことに因んだ unukar 互いに見る、乃至はもっと直接に unukar 結婚する、 に基づくものであろう。鶺鴒説話と潮の滴り、とどちらが原初のモチーフかは判らないが、日本語では全くつながりがないものが、アイヌ語を介するとこのように関連してくる。