JCウイルスの人類学1 系統樹の意味するところ |
JCVの系統樹が提示されている。参考文献2の系統樹がより包括的であり、また後にアイヌに関しても評論するので引用しておく。 概要を説明すると、JCVは大きく三種類に分類されA,B,Cと名づけられる。
Aはヨーロッパ人に多い為か、Euという名称をつけられて、Eu-a, Eu-b, Eu-cの三種類に分類することができる。ここで顕著なことはEu-aをつぶさに見ると日本人とヨーロッパ人から検出されるJpn型と、東シベリア先住民、アイヌ、アメリカ先住民から検出されるArc型に二分出来ることである。 Bには13種に分類が可能であり、その中のMY型は更に8種に分類可能である。
系統樹は原理的に次のように書かれている。
−−−枝1 この場合に、枝1を枝2の祖とは考えない、というのは論理的に普遍な約束事として良いと思う。
−−−子1 兄 |
上に掲げた参考文献1では、基本的に −−−ヨーロッパ人 祖−−| −−−日本人 という系統樹を掲出して(参考:参考文献2の系統樹) 「現代日本人の成り立ちを少数派集団を含めて表現するなら、『CY,MY,SCまたはB1-aを持った4つのモンゴロイド集団とEU-aを持った1つのコーカソイド集団が別々に日本列島へ渡来し、互いに混ざり合って現代日本人となった』ということになる」と結論している。 これは「兄を弟の先祖だ」と云っていることになりはしないか? 実は、この論文では「祖」から派生したグループ全部を「コーカソイド」呼ぶ、という定義をしているので、論文内部(論文それ自身)では矛盾しないように配慮してある。しかし、これはトートロジーである。(日本人とヨーロッパ人を合わせてコーカソイドと呼ぶ、だから日本人にはコーカソイドが入っている、、、) トートロジーであることも問題だし、更に、その定義は良いのか。後にヨーロッパ人や日本人に分化することになる「祖」をコーカソイドと呼んで良いのか。ヨーロッパ人に分化した後のヨーロッパ人をコーカソイドと呼ぶべきではないのか。この系統樹の読み方は、ヨーロッパ人と日本人が保有するJCウイルスには共通の祖がある、ということだ。 そこでもし、ウイルスの進化系統と人類集団の進化系統を等価に考えて良いのならば、ヨーロッパ人と日本人には共通な祖がある、という推定が導かれる。それは、既にMtDNAの研究からかなり(私としては十分に)ハッキリしていることだ。 宝来聡著『DNA人類進化学』のp73には次のような推定が図示されている。即ち:
MtDNAの系統樹でも、ヨーロッパ人と日本人とを含むクラスターがある。宝来聡著『DNA人類進化学』P29の場合ならC2,C4,C5。しかしそれに基づいて「日本人にコーカソイドが混入している」という考察、表現はなされていない。兄弟のどちらかが、他方の祖だ、という陥穽にはまっていない、と読んだ。 歯に衣着せずもの申せば、JCV参考文献(1)の結論の1つ「太古に於けるコーカソイドの東へ向けての大移動の波のひとつが日本の東北地方、日本海側に至り・・・」は頂けない、ということである。太古に東に向かってきたのは(a)コーカソイドとモンゴロイドの共通の祖先か、 (b)モンゴロイドに分化した人類集団、というのが論理的であろう。 [追記:2004/05/29] 更に、地点Aと地点Bで同じJCV亜型が見つかった、これ即ちヒトがAからBに移動してきた証拠、というのが性急に過ぎよう、と思うものだ。A、Bの人たちは地点CからそれぞれA,Bへ進んだもの、ということにも思いを致すべきであろう。このことはMtDNAの解釈に於いても同じことが言える。 |
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