日本語と高句麗語は同源か 1
orig: 2004/06/29
rev1: 2004/07/19 corrections

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下表は板橋論文にて抽出された高句麗語から日本語と同源とされるものを抜き出した表に対して:
  1. 合致していると見なせる子音の数を数え
  2. 合致していると見なせる母音+子音の数を数え
  3. 語の子音数(大きい方)
  4. 母音+子音数(大きい方、重母音は1と数える)
を挿入し、それぞれの合計を示し
更に、1./3.の比率と2./4.の比率を示した。(合致・不合致の判定には多少説明を要するルールに基づいた。下記『日本語の誕生』にいうコントロールカードの考え方である。)

結論としては、合致している子音数の平均は一語あたり1.4であり、87子音中65子音(約3/4)が合致している、と判定された。母音+子音でも159文字中121文字(これも約3/4)が合致している、と考えられる。

安本美典・本多正久著『日本語の誕生』(大修館書店)では、頭子音が合致していれば同源である、として論を進めている。その方法では、ここで計ってみた合致子音数の比率は1.0であっても構わない、という意味になる。(そういう方法でやってみたが、実際は幾つかの語で第2子音も合致していた、ということもあるだろうから、実際にこの数値は1.0よりも大きいであろうが、アプローチとしては1.0でも構わない、というものだ。)

『日本語の誕生』では上古日本語と中期朝鮮語の基礎語彙200語に関して53語において頭子音が共通と見なされる。(p62)つまり26.5%。板橋論文では古代日本語と高句麗語の基礎語彙200語に関して19語(9.5%)が対応している、とする。

中期朝鮮語は資料も豊富だからであろう、基礎語彙200項目の全てを埋めることができる。一方、高句麗語は再構・抽出できたものが少ない(全部で111語、その内基礎語彙は半数もないであろう{まだ数えていない})から26.5%と9.5%を直接比較してはならない。

実のところ、最初日本語と同源とされる高句麗語とを見比べていたとき、殆ど頭子音の一致だけのように思えたのだったが、精査してみたら、上記のように予想を上回る一致度のものを同源と推定されていた、ということである。

次にこれら同源とされる語を日本古語の特徴に照らしてみる。

番号KG漢字KG音KG意味OJ音OJ意味合致子音数合致子音+母音数総子音数総子音+母音数
1biarFe1223
4次若ciniatuno2424
6盒馬γapma大山yama2424
7gu童,童子ko1子ども1212
8i-i-r入る1123
10kan首〜頭kauFe,kasira,1136
11甲比kapikaFi2423
12加尸kar鋤{梨/牛}kar-刈る2333
14今勿k∂murkuro1333
15斤〜斤乙kil/kir/kinki/ko2i-1223
17居尸korko2ko2ro22336
18古衣koγoikoFu2424
20功木kun[m]kuma2324
21古斯kvsikuciro2飾り腕輪2436
22古次/串kvci/kuarkuti2424
23ku∂rki1123
25mama馬ウマ1212
26買尸meirmira1324
27滅烏meruma1124
28mey水、川mi1212
30mirmi1213
31内米nami池、長池nami2424
32乃勿namurnamari3535
33難隠naninnana1335
34nana1212
35耐〜那nana1212
36巴衣pa'iy巌、岩iFa1213
38波旦patanwata2434
40pukFuka-深い2324
41沙伏saipukso2Fo赤土2434
43sirapsiro:sira-2435
45首/烏su/vusi1112
46susa-若い1112
48tartake2岳、山1224
50tokto2wo1224
52助乙tsi(ir)(mi-)ti1212
53烏斯含usiγamusagi2426
54于次ucitu1213
57也尸yar狂、狸tanuki0036
58要隠yawinyanagi:yanoki2336
59vwi1112
60na/nayno2矢の竹1112
61tantani2324
63於乙uir泉井iri/wi泉/井1212
65n∂属格・修飾辞no2,na,nga属格・修飾辞1212
66斯/史si属格・修飾辞si属格・修飾辞1212
67u派生名詞形成辞i-派生名詞形成辞?1111
平均1.42.5
47=count合計6511789165
0.750.75

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