日本語と高句麗語は同源か 4
音韻法則的検証
orig: 2004/07/15
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下表には板橋論文に抽出された高句麗語から日本語と同源とされるものを抜き出した。各対応において、どのような音韻則が抽出できるかを検討した。基本的に頭子音は共通なので、ここでは母音の対応を見てみる。

なお、最右欄で母音に数字のあるものは、1が甲類、2が乙類の意味であり、()に入れたものは板橋論文には明記が無く私が入れたものであることを示す。
番号KG漢字KG音KG意味OJ音OJ意味抽出される音韻則
1biarFeia→e
4次若ciniatunoi→u ia→o(1)
6盒馬γapma大山yamaa→a
7gu童,童子ko1子どもu→o1
8i-i-r入るi→i
10kan首〜頭kauFe,kasira,a→a
11甲比kapikaFia→a i→i
12加尸kar鋤、犁kar-刈るa→a
14今勿k∂murkuro∂→u u→o
15斤〜斤乙kil/kir/kinki/ko2i-i→i i→o2i
17居尸korko2ko2ro2o→o2
18古衣koγoikoFuo→o oi→u
20功木kun[m]kumau→u
21古斯kvsikuciro2vが未定
22古次/串kvci/kuarkutivが未定 ua→u
23ku∂rkiu∂→i(2)
25mama馬ウマa→a
26買尸meirmiraei→i(1)
27滅烏merumae→a
28mey水、川miey→i(1)
30mirmii→i(1)
31内米nami池、長池namia→a i→i
32乃勿namurnamaria→a
33難隠naninnanaa→a i→a
34nanaa→a
35耐〜那nanaa→a
36巴衣pa'iy巌、岩iFa音(語形)が違い過ぎ
38波旦patanwataa→a
40pukFuka-深いu→u
41沙伏saipukso2Fo赤土ai→o2 u→o
43sirapsiro:sira-i→i a→o/a
45首/烏su/vusi音韻則抽出の対応不明
46susa-若いu→a
48tartake2岳、山a→a
50tokto2woo→o2
52助乙tsi(ir)(mi-)tii→i
53烏斯含usiγamusagiu→u i→a a→i
54于次ucituu→i
57也尸yar狂、狸tanuki語形全く異なる
58要隠yawinyanagi:yanokia→a i→a/o
59vwiv未定
60na/nayno2矢の竹a/ay→o2
61tantania→a
63於乙uir泉井iri/wi泉/井ui→i
65n∂属格・修飾辞no2,na,nga属格・修飾辞∂→o2/a
66斯/史si属格・修飾辞si属格・修飾辞i→i
67u派生名詞形成辞i-派生名詞形成辞?u→i


以上を総括すると、
  • 高句麗語の a については、和語の a に対応するのが殆ど。
    例外的に和語のi や o, o2 に対応させているものがある(41, 53, 60)例外が起きる場合、の説明が求められる。53に関してならば、第2音節以降では(または、アクセントがない音節では) a→i が許される、とか・・・
  • 高句麗語の i については、和語の i に対応することが多いが
    u o2 i1 a o1 などに対応しているものもある(4, 15, 30, 58)。どういう時に i にならないのか、説明が求められる。
  • 高句麗語の u については、和語の u に対応するのが殆どだが
    i o に対応しているものがある(40, 67)。u にならない理由の説明が求められる。
  • 高句麗語の o については、和語の o に対応しており和語側に甲乙の別がある場合にはo2に対応しているようである。
  • 高句麗語の e は 滅 mer の一語だけで、和語の a に対応させているが疑わしい(借用語)対応例、とするにとどめる。
  • 高句麗語の二重母音と和語の対応は例が少ないので省略するが、一つ特記しておきたいのは、次の対応である。
    • 26 meir→mi(1)ra
    • 28 mey→mi(1)
    • 30 mir→mi(1)
    これが何を意味するのか。高句麗側の微妙な音の違いを和語では一つの音として集約させたものか、高句麗側では単に音が揺れていた、揺れて記録されたに過ぎないのか。mi2 が出てこないのは、語数が少ないからか、根本的な理由があるのか。それを研究するには高句麗語のこと(音組織、方言、アクセントなど)がもっと判らねばなるまい、が、それはかなり絶望的に思われる。

日本語と高句麗語は同源か 1
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