この判定(借用なのか、同源に溯れるか)から恣意性を排除するのはなかなか難しそうです。最終的には音韻法則が成り立つか否かが大きな決め手になるでしょうが、今は、そうかもしれないぞ、というものを集めている段階です。
主観を排除しきれませんが、新しそうなもの(例:カッタロ=勝つ、マケタロ=負ける)は借用であろう、地名・人名に使われているもの、ユーカラに良く出てくるもの、方言、なんかは候補じゃなかろうか、という訳です。
少しずつ足してゆくつもりです。
アイヌ語 | アイヌ語の意味 | 日本語 | 備考 | 出典:コメントなど |
atu | 吐く | オタク、エタクなど | 方言 | 村山七郎、研究、p68。記紀には「タグリ」とある高倉下・手栗彦・天香具山 |
inotu | 死霊の霊魂 | 命 | 村山七郎、研究、p91 | |
iw<*tiw? | チゥ | 琉球で「人」 | ヤマトンチゥなど | iwan-iw 6人、など。樺太方言の複数語尾-sin, -cin も要研究 |
kamuy | 神 | 神 | アイヌ語辞典にはkami(y)asiという語彙もある(意味は:化け物、魔物) | |
ki | 茅 | 茅=チ | キ、もそうか? | 茅渟・考。kisarも同じ。象潟、木更津など?また「耳(kisa)」地名もこれの場合もあるか。 |
ki+rasi | 両方とも虱 | キラザ、キラジ、キラズ | 方言 | 村山、研究、p113。また大隅風土記に「キサシム」。和名抄に「キササ」参照・隼人 |
kunne<kur-ne | 黒い、暗い、夜 | 黒、暗い、雲 | 服部四郎は朝鮮語も含めて三言語共通の源から発生したか、と見る | |
kus | 通る | 越す | クサに変じてもいる | 下記 kus-pa を介して kus とkusaに混用があるのだろうか。 |
kusa | 舟で渡す | クサ* | 記紀の日下の類? | 地名:日下、日下部、草津など。「樟葉」(崇神紀埴安彦の乱)は kusa の複数形 kus-pa (文献にはないが *kusa-pa?)の可能性が高い。 |
kusuri | 薬 | くすり | 借用? | |
marapto, maratto | 客、宴会 | まろうど、客人 | アイヌ習俗:熊の頭を客人とする。参考:アラハバキ | |
more | 鎮まる | 森、杜 | ユーカラに、a-more mosir 我が静かにしていた国、あり | |
nomi | 祈る | のみ(叩頭) | 垂仁紀ほか書紀に8例 | |
nonno | 花、よいもの、 | 神仏 | 方言、幼児語 | nonno-itak=祈る |
num | 実・粒 | 瓊? | ヌナカハのヌはここへ遡るか? 目玉=sik-num | |
nusa | 祭壇 | ぬさ・幣 | 参考:イササワケ | |
nutap | 沼、湿地 | ぬた、にた | 出雲風土記「仁多」郡など | 酒肴のヌタもこれか? |
pe | 〜つ(何個) | へ(一重、二重などの重) | sine-p 一つ(の)、iwan-pe 六つ(の) | |
pira | 坂 | 平良 | 沖縄地名 | 枚方、ヨモツ平坂、なども |
pis | 浜 | ピシ、ヒシ | 海中の州 | 大隅風土記、琉球方言参照・隼人 |
pikata | 南風 | ひかた=南風 | 借用? | |
pito | 神、人 | 人 | 神鳥谷(栃木県)ヒトトノヤ | |
poru | 洞 | ほら | ||
rok | 座る | ロキ | 神ロキ、など | |
sar-ki | 葦(湿原・葦類) | 更生、などの地名 | ||
sinrit | 根・祖先 | シニリンチゥ | 沖縄方言で先祖神 | アマミンチュゥと対にもなる。参照:根の国 |
sito | 餅 | シト・シトギ | sitoki=玉飾りの真ん中の金属;首飾りの下の方につく丸いもの(>鏡もち?) | |
tomari | 港 | 泊 | 地名 | |
toro | 瀞 | 地形名 | ||
una | 灰 | ウナ、ヨナ、など | 方言 | 地名に多い。米などが当てられる。参照:ウナに就いて |
yu | 温泉 | ゆ(湯) | 借用関係? |