D-ループ |
先に述べたようにMtDNAは約16,500個の塩基からなり、環状になっている。全ての塩基は解読されていて、15,000余の塩基が37個の遺伝子を構成していて、1,100個の塩基に関しては遺伝に関わらないことが判っている。この1,100個の一群をD-ループと呼んでいる。 核内遺伝子の塩基置換(突然変異)の速度を1とすると、MtDNAのそれは5〜10と考えられている。MtDNAの中のD-ループに関していえば、この部分はMtDNA全体の置換速度の更に4〜5倍とされている。このように、D-ループは置換速度が速い(遺伝に関わらないから変異が致命的ということがない、だから変異が保存され後代に伝わる、のだろう)、ということは、個体差が大きく観察できる、ということになる。 余談:ヒトとチンパンジーの比較では核内遺伝子では1%の差異があるに対してMtDNAを比較すると9%異なっているそうだ。 ここまでで、一つ気をつけておく事は:MtDNAの教えるところにより、何々と何々は同じだ、とか、一つ違うとか云っても多くの場合、最大でもこのD-ループの範囲に関してである、ということだ。それもD-ループ全体でもなく、更にその一部の482個とか190個なのだ。MtDNA全体の16,500個に対して約1〜3%の話だ。この範囲で塩基配列が同一であっても他の部分がどうなっているのか、また、核内遺伝子の方がどうなのか、は見えていない、という事は知っておこう。 なお、浦和一号と呼ばれる縄文人の人骨から得られたMtDNAのD-ループの中の塩基数は190個であった。 |
ミトコンドリアDNAは何を教えてくれるか? | |
はじめに | ミトコンドリアとは? |
D-ループ | 遺伝に関わらないMtDNAの一部 |
利点と弱点 | MtDNAによる系統研究の弱点 |
何が判ったのか | 落ち着いて考えよう |
12,000年の意味 | あくまでも平均である |
追補:アイヌと琉球人の遺伝的距離 | 触れられない事実 |
再び、アイヌと琉球人の遺伝的距離 | 12,000年以上離れているは虚 |
三種類の縄文人? | 何を意味するのか? |
クラスター分類の読み方 | 何を意味するのか? |
たけ(tk)氏の「ミトコンドリアDNA研究」の紹介 |
ミトコンドリア関係リンク |