利点と弱点 |
MtDNAは母親からしか遺伝しない。父親が持つMtDNAは子に一切伝わらないのだ。これは卵子の受精時に父親のMtDNAが消失することが確かめられているそうだ。 これは一つの利点でもあり、また良く認知されるべき弱点だ。 すなわち、利点としては、ヒトの系統を考えるに際して父母の両系統を考慮せねばならないことが物事を甚だ複雑にしているから、母系だけでも明確に筋道を立ててくれる手法として現在では恐らく最強のものであろう。 一方、そのこと自体が弱点でもある。云うまでもない「母系しか判らない」(注)ということだ。これはどういうことを意味するか、というと、先住民女性(1F)と渡来人男性(1M)が娘(2F)を設けた。その娘(2F)はMtDNAでは母親のものだけを継承するが形態(歯、骨、身長、などなど)は平均して言えば父母から半々に受継ぐ。その娘(2F)が成長して、渡来人男性(2M)と結婚してまた娘(3F)が出来たとしよう。この娘3FのMtDNAは母(2F)のもの=祖母(1F)のものと一緒だ。しかし、3Fの形態は(2Fの形態が既に先住民形態と渡来系形態が半々になっているので)先住民形態:渡来人形態=1:3となる。これを繰り返して行くと、n代目の娘(nF)は、MtDNAでは先住民だが、形態は殆ど渡来系、ということになる。 こうしてみると、アイヌと日本人は同種か?などという疑問、設問はその設問の意味が無い、あるいは、余程吟味して定義を明確にしないと設問自体がナンセンスということになる。「同種」って何のことだ??? 実に、人種、民族とは幻想である、と言われることが良くわかる。 (注)今日見つけた情報だが、父親のMtDNAが生き残るという可能性が万に一つはあるらしい。一般には気にしなくてよいようだが、母親だけから遺伝するのが例外ない訳ではないらしい。ミトコンドリア情報リンクへ |
ミトコンドリアDNAは何を教えてくれるか? | |
はじめに | ミトコンドリアとは? |
D-ループ | 遺伝に関わらないMtDNAの一部 |
利点と弱点 | MtDNAによる系統研究の弱点 |
何が判ったのか | 落ち着いて考えよう |
12,000年の意味 | あくまでも平均である |
追補:アイヌと琉球人の遺伝的距離 | 触れられない事実 |
再び、アイヌと琉球人の遺伝的距離 | 12,000年以上離れているは虚 |
三種類の縄文人? | 何を意味するのか? |
クラスター分類の読み方 | 何を意味するのか? |
たけ(tk)氏の「ミトコンドリアDNA研究」の紹介 |
ミトコンドリア関係リンク |